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集団全体での損失額を予測して、その額を集団各人が公平に負担すれば、(加入者の不正意図がない限り)全員が万一の事故の損害に対して備えることができ、少額の負担で、リスクへの対応が可能になるわけです。
逆にいえば、大数の法則が適用できるような大量の集団がなく、あるいは、そこから合理的な一定確率が導き出せなくては、合理的に保険は成り立だないことになります。
こうした性質から保険については「一人は万人のために、万人は一人のために」の制度といわれています。
ただし、現代の損害保険は、こうした相互扶助的な精神のための制度というよりも、個々の加入者の自助のための制度という色彩が強くなってきているともいえるでしょう。
保険ということばわが国で保険という言葉が使われ始めたのはそう古いことではないようです。
現代的な保険に関するわが国最初の文献は福沢諭吉の「西洋旅案内」(1867年刊)だとされていますが、そこではinsuranceを「災難請合の事イシュアランス」と紹介しています。
当時はまだ保険という訳語が出来ておらず災難請合としていたのでしょう。
ちなみに「西洋旅案内」では災難請合には、生涯請合、火災請合、海上請合の3通りがあると紹介しています。
12年後の1879年にはわが国最初の保険会社、東京海上保険会社が設立されていますから、明治の初期に保険という言葉が一般化したものと思われます。
中国語では保険とは元々「要害の地に立てこもること、険要の地を保つこと」という意味だったようです。
「保険自守、此示弱也」(魏志鄭渾伝)と書かれた文献もあります。
その後、19世紀半ばに上海や香港で出版された英華字典ではassuranceを保険と訳しています。
わが国は、中国からこの用法を輸入したものだと思われます。
事故が発生したときに、保険者から保険契約者もしくは被保険者に支払われるのが「保険金」です。
保険料は、純保険料の部分と付加保険料の部分の二つに分かれますが、両者の合計を営業保険料ということもあります(積立保険については更に積立保険料の部分が上乗せされます)。
純保険料は損害保険会社の保険金支払いのファンドになる部分で、損害発生の頻度や損害額等の統計的データに基づいて算出されます。
被保険者は保険事故発生の際、このファンドから保険金の支払いを受けることになります。
損害保険は大数の法則の下で成り立っている制度であると説明しましたが、例えば、一〇〇〇万円の家を持っている保険契約者が一〇万人にいて、その集団の一年間の火災発生確率が千分の二であるケースを想定します(ここでは家が全焼するケースのみを想定します)。
この場合、一年間の火災による損害額は1000万円×一〇万件×祗10呂=二〇億円ということになります。
これを一〇万人で分担すれば、一人当たりの年間負担額は二万円になります。
これが純保険料の金額です。
保険契約者が支払う純保険料の総額は、事故発生により保険契約者・被保険者に支払われる保険金の総額と等しくなることが保険制度の基本とされており、これを「収支相等の原則」といいます。
実際に保険契約者が支払う保険料には、純保険料に付加保険料が加わります。
付加保険料は代理店が受け取る手数料と損害保険会社の経営に必要な経費(社費といいます)及び利潤に充てられる部分です。
発生したときに保険者の保険金支払義務が具体化するような事故を保険事故といいます。
自動車事故、火災、風水災、海難事故等などが典型的な例です。
保険事故は、自然的な事象であることも、人為的な事象であることもありますが、偶然な事象(事故)であることが要件です。
偶然とは、損害保険契約の締結時において、被保険者にその事故の発生することと発生しないこととがいずれも可能であること、すなわち事故の発生・不発生について、保険者・保険契約者・被保険者のいずれもが知らないことをいいます。
損害保険契約では、どのような事故を保険事故とするかを、個々の契約ごとあるいは保険商品ごとに、あらかじめ定めています。
損害保険契約とは、ある一定期間内に生じた保険事故による損害を補償する契約です。
損害保険会社が責任を負うべき期間を保険期間といいます。
保険期間内に保険事故が発生すれば損害保険会社は保険金を支払う責任を負いますが、期間外に発生した保険事故については、責任を負いません。
保険期間は通常、○年○月○日○時から○年○月○日○時まで、あるいは○年○月○日○時から一年間、などと日時で決めるのが一般的ですが、貨物保険の航海建保険(貨物が一定の場所を離れた時に保険期間が開始され、一定の場所に搬入された時に責任が終了する)のように、事実をもって定めているケースもあります。
なお、一般的には、損害保険会社は保険期間内であっても保険料の領収前に発生した保険事故については、保険金の支払対象にはならない旨が保険約款で定められています。
これを、保険料前払主義あるいは保険料領収前免責といいます。
このように、保険契約と同時に保険料を全額徴収しなくてはいけないという原則を保険料即収の原則ということがあります。
なお、保険料分割払契約など特に約定がある場合には、この原則は適用されません。
保険事故発生の客体となるものを、保険の目的、もしくは保険の目的物といいます。
火災保険における建物・家財、船舶保険における船体などがこれにあたります。
保険の目的について保険事故が発生するか否かについて、被保険者が有している経済的な利益を被保険利益といいます。
例えば、住宅が火災により焼失した場合、住宅の持ち主である家主は経済的な不利益を被ります。
この場合家主はその住宅に被保険利益を有しており、被保険者として、そのリスクを保険でカバーすることが考えられます。
一方、家主とは無関係の第三者はその住宅に被保険利益を持ちませんので、被保険者にはなり得ないことになります。
このように損害保険契約が有効であるためには、被保険利益の存在が必要です。
これは、保険は後述する賭博とは異なるためです。
保険契約の対象である被保険利益の経済的価値の評価額を保険価額といいます。
建物に付ける火災保険であればその建物の評価額(例えば三〇〇〇万円)が保険価額になります。
すなわち保険価額とは事故が発生したときに被保険者が被る可能性のある最大の損失額といえます。
これに対して、損害発生時に保険者が負担する保険金支払責任の最大限度額として、予め保険契約上定めた金額を保険金額といいます。
先ほどの三〇〇〇万円の建物に二〇〇〇万円の保険を付けた場合、保険価額は三〇〇〇万円、保険金額は二〇〇〇万円ということになります。
損害保険は被保険者が実際被った損害をカバーするみが目的ですから、実際の損害額が保険金支払いの限度となります。
また、被保険者が保険価額を超えた損害を被ることはあり得ません。
こうして考えると、損害が発生した場合、支払われる保険金は、実際損害額、保険価額、保険金額のうち、最も低い額であることがわかります(図1-2参照)。
保険価額と保険金額とは一致する場合としない場合があります。
一致する場合、言い換えると保険価額一杯に保険金額を設定した場合を「全部保険」といい、この場合は発生した損害額全額が保険金として支払われます。
保険金額が保険価額を下回っている場合を「一部保険」といいます。
これには、保険契約者が当初から意図的に保険金額を低くする場合と、契約締結後の物価騰貴等による場合とがあります。

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